看護師の年収は東京と鹿児島で142万円違う — 令和6年調査で見る47都道府県の賃金地図

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厚生労働省が2025年3月に公表した「令和6年賃金構造基本統計調査」によれば、看護師(正看護師・准看護師を含む、企業規模10人以上)の全国平均年収は 519.7万円 です。この全国平均を押し上げているのは首都圏と関西圏の数県で、最下位の鹿児島県では 426.9万円 と、東京都(568.9万円)との差は 142万円 にのぼります。

月給ベースに直せば、毎月 約12万円 の差です。これは手当や夜勤回数の違いではなく、「同じ正看護師免許を持ち、同じ時間働いている人」の賃金差です。

本稿では、この賃金地図を「どの県が高くてどの県が低いか」だけで終わらせず、なぜこの142万円差が生じているのか を、公開データで説明できる範囲で分解していきます。

数字で見る賃金地図 — 上位10県

まず、令和6年データで平均年収が高い順に並べた上位10都府県はこちらです。

順位都道府県平均年収全国平均との差
1東京都¥5,689,000+¥492,000
2京都府¥5,640,000+¥443,000
3大阪府¥5,598,000+¥401,000
4神奈川県¥5,463,000+¥266,000
5奈良県¥5,427,000+¥230,000
6愛知県¥5,421,000+¥224,000
7群馬県¥5,388,000+¥191,000
8宮城県¥5,384,000+¥187,000
9栃木県¥5,273,000+¥76,000
10静岡県¥5,217,000+¥20,000

上位3位を首都圏・京阪神がほぼ独占するのは想定通りですが、見落とされがちなのが 群馬(7位)・宮城(8位)・栃木(9位) の健闘です。この3県に共通するのは「県内に大学病院+複数の急性期基幹病院を抱えていること」で、首都圏からのアクセスも良い点です。「地方だから低い」という単純な図式では説明できない例が、上位10県の中にすでに存在しています。

逆に注目すべきは、全国平均(519.7万円)を上回るのは上位10〜11都府県しかない という事実です。47都道府県のうち 36県 は全国平均を下回ります。平均値という言葉のイメージとは裏腹に、「平均」は上位の数県に引っ張られているだけで、ほとんどの県は平均未満の世界にいます。

下位10県 — 九州・沖縄と東北の特定ゾーン

逆側の顔ぶれは、以下の通りです。

順位都道府県平均年収
38高知県¥4,389,000
39愛媛県¥4,360,000
40長崎県¥4,281,000
41沖縄県¥4,256,000
42大分県¥4,232,000
43青森県¥4,209,000
44熊本県¥4,089,000
45佐賀県¥4,065,000
46宮崎県¥4,058,000
47鹿児島県¥3,966,000

※ 38〜47位は平成21年〜27年の平均値(厚労省調査の経年集計)。令和6年調査の末尾数県の詳細な実数値は公表形式の都合で全県の絶対値が再集計済みではないため、複数調査年度の比較値を併記しています。

下位10県のうち 九州・沖縄から7県(長崎・沖縄・大分・熊本・佐賀・宮崎・鹿児島) がランクインしています。この偏りは偶然ではありません。後述するように、これは診療報酬の地域加算制度と人口あたり病院数、そして若年看護師の流出率という3つの要素が重なった構造的な結果です。

もう一つの見落としがちな事実として、鹿児島と東京の差(142万円)を単純に40年の就業期間で計算すると、生涯年収の差は約5,680万円 になります。これは住宅ローン1棟分に相当する差額で、個人の努力で埋められる幅を明らかに超えています。

142万円差の正体 — 構造要因を3つに分解する

この賃金格差は、感覚的には「東京は都会だから給料が高い」で説明されがちですが、実際はもっと具体的な制度と市場構造に根ざしています。以下、データで追える範囲で3つの要因に分けます。

要因1: 診療報酬の地域加算(1級地〜7級地)

2024年の診療報酬改定で、医療機関の所在地は 1級地から7級地+その他 に区分され、看護配置や入院基本料等の点数に応じた「地域加算」が上乗せされる仕組みが継続しています。具体的には、

  • 1級地(東京23区等): 入院基本料に対して +18点/日
  • 2級地(横浜・大阪市等): +15点/日
  • 3級地(名古屋市・京都市等): +14点/日
  • 4級地(札幌・神戸・福岡市等): +11点/日
  • 5級地: +9点/日
  • 6級地: +5点/日
  • 7級地: +3点/日
  • その他: 加算なし

「+18点/日」と「0点」の差は、1点=10円換算で 1日あたり180円、1ベッドあたり年約66,000円 の収入差になります。400床規模の病院なら年間約2,640万円の差です。この差がそのまま人件費に回るわけではありませんが、病院経営の余力=看護師の給与水準の上限を決める大きな変数になっていることは、経営側の人件費率(一般的に50〜55%) から逆算しても明らかです。

鹿児島・宮崎・佐賀といった下位県は、1級地の医療機関が県内にほとんど存在しません。この一点だけで数十万円の年収差が説明できます。

要因2: 大学病院と大規模急性期病院の分布密度

もう一つの構造要因は、高給与帯の看護師を大量に雇う大学病院の分布 です。

公開資料ベースで数えると、東京都内の大学病院は約13施設(東大、慶應、順天堂、日本医大、東京医大、東邦、東京医歯、東京女子医大、杏林、帝京、昭和、日大、聖マリアンナ等の主要所在地を含む)。これに対して 鹿児島県の大学病院は1施設(鹿児島大学病院)のみ です。

大学病院は:

  • 入院基本料の上位区分(急性期一般入院料1、7対1看護配置)を取得していることが多く、看護配置が手厚い
  • 認定看護師・専門看護師の雇用が多く、資格手当の水準が高い
  • 夜勤三交代の頻度が高く、その分の深夜割増・夜勤手当が厚い
  • 賞与が年4.5ヶ月前後と、中小民間病院(年3.0〜3.5ヶ月)より明らかに高い

これらの要素が重なり、東京の「大学病院看護師平均」は同じ東京の民間中小病院平均より年間で 50〜80万円 高くなります。大学病院そのものの存在が、都道府県全体の平均を押し上げているわけです。

対照的に、大学病院が1施設しかない県では、平均値を押し上げる主役がいません。鹿児島県全体の平均は427万円です。この数字は県内の最高水準帯である鹿児島大学病院・県立病院群を含めた加重平均であることを考えると、県内の中小民間病院・療養型病院の看護師の年収は、平均よりさらに低い水準 ということになります。

要因3: 看護師の流動性と「転職市場の厚み」

3つ目は、転職市場の厚みそのものです。

首都圏・京阪神では、看護師向け転職エージェント(マイナビ看護師、看護roo!、レバウェル看護、NsPace Career 等)が扱う病院数が圧倒的に多いです。求人検索機能で都道府県別に見比べると、東京の求人件数は高知県の十数倍から数十倍の規模になります(各エージェントの公開求人ベース、2026年春時点)。求人数の物理的な差は、そのまま「交渉テーブルに乗せられる選択肢の数」の差になります。

複数病院を並行交渉できる市場では、同じ経験・資格の看護師でも提示年収は病院側が競り合う形で上がっていきます。一方、求人が極端に少ない地方都市では、看護師側の交渉カードが弱く、年収は各施設の内規(給与表)にほぼ固定されます。これは制度の問題というより、純粋に労働市場の需給と流動性の差です。

結果として、同じ経験年数・同じ資格の看護師でも、勤続 10年時点の年収差が、首都圏と九州で90〜150万円に広がる という現象が起きます。これは制度の問題ではなく、市場構造の問題です。

数字に出ない「もう一つの格差」

ここまでは厚労省の統計に出てくる数字だけで話を進めてきましたが、実務上の賃金差は統計の数字だけでは測れません。具体的には以下の3つが大きいです。

住宅手当の差: 東京都内の大手病院グループ(IMS、徳洲会、東京都保健医療公社、JCHO等)の多くは、看護師向けに月2〜5万円の住宅手当または寮(家賃1万円前後)を用意しています。地方では住宅手当そのものが存在しない病院が少なくありません。年間換算で24〜60万円の差になりますが、統計上の「年収」には原則含まれません。

奨学金返済免除制度: 県立病院や自治体病院では、在籍3〜5年を条件に看護学生時代の奨学金(月額5〜10万円 × 3年 = 180〜360万円)の返済を免除する制度があります。これは実質的な賃金ですが、「年収」としては計上されません。首都圏ではこの制度を使う病院が少ない代わりに、基本給そのものが高い、という構造になっています。

夜勤回数と深夜割増: 同じ「常勤看護師」でも、急性期病院は月8〜9回、療養型病院は月4〜5回と夜勤回数が違います。夜勤1回あたり12,000〜15,000円として、月4回の差は年間60〜80万円になります。大学病院と急性期基幹病院が多い県ほど、この夜勤手当も分厚くなります。

統計の「平均年収」はこれらの差を完全には反映しないので、実際の手取り差は142万円よりもさらに大きい可能性が高い、と理解しておいた方が現実に近いです。

この数字を個人の判断にどう使うか

ここまで読むと「地方の看護師は詰んでいる」という結論に見えるかもしれませんが、実態はもう少し複雑です。個人レベルでこの格差を利用・または緩和する選択肢は、主に3つあります。

(A) 地元から出ずに「施設の種類」を変える 同じ県内でも、療養型病院→一般急性期→大学病院の順に年収は上がります。療養型から急性期へ転職するだけで、地方でも年間30〜50万円の差が出ることが多いです。施設カテゴリを変える転職は、引っ越しコストがかからない分、リスクが小さい選択肢です。

(B) 2〜3年の期間限定で首都圏/京阪神に出る 独身期や子育て前の時期に2〜3年だけ首都圏に出て、上乗せ分の年収と退職金、そして「首都圏の大学病院で働いた経歴」を持ち帰るパターンです。東京23区の民間病院の勤続3年分の退職金は、地方の5年勤続とほぼ同額になるケースが多いです。

(C) 特定領域の認定看護師/専門看護師になる 認定看護師・専門看護師の資格手当は、月20,000〜50,000円(年24〜60万円)が相場です。この資格手当は都道府県を問わず同水準で支給されるため、地方でも地域差を部分的にキャンセルできます。ただし取得までに5〜7年かかります。

どれが合理的かは年齢・家族構成・キャリアのフェーズによって変わります。1つ言えるのは、「転職エージェントに登録してみる」という行動コストゼロの一歩だけでも、自分の現在地を知る意味で有効だということです。今の勤務先が相場より低いのか、実は相対的に高待遇なのか、それを知らないまま年数を重ねるのが一番の機会損失になります。

結論、というよりは注釈

最後に、この記事の数字の読み方について注記しておきます。

  • 令和6年賃金構造基本統計調査は 企業規模10人以上の事業所 に限定されたサンプルで、小規模診療所や訪問看護ステーションは含まれていません。実際の看護師全体の分布には差があり得ます。
  • 「平均年収」は極端値に引っ張られやすいです。中央値(median)は平均値より20〜30万円低い と推定されており、「平均に届いていない」と感じる看護師の方が実は多数派である可能性が高いです。
  • 調査年度のバラつきに注意が必要です。本稿は令和6年データ(2024年調査・2025年3月公表)を主軸に、一部の下位県データは経年平均値を併記しています。最新値は厚労省 e-Stat で各年度ごとに確認できます。

このページの下部にある 診断ツール では、お住まいの都道府県・経験年数・施設種別を入力することで、自分の想定年収が令和6年の実データと比較して上位何%にあたるかを確認できます。「平均値」を自分の数字として読み替えるための補助ツールとして使ってもらえれば幸いです。

自分の相場を「求人票」で確認する

本稿で示した令和6年賃金構造基本統計調査の平均値は、あくまで全国平均です。自分の経験年数・施設種別で実際にいくらの提示年収が出るのか を知るには、看護師特化の転職エージェントに無料登録して、現在オープンになっている求人票のレンジを見比べるのが最短ルートです。

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主な出典:

  • 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」職種別第2表(2025年3月公表、e-Stat)
  • 厚生労働省「令和6年度診療報酬改定における地域加算」告示別表第11
  • 日本看護協会「2024年病院看護実態調査報告書」(看護師の賞与・夜勤手当の実態に関する全国調査)
  • 各大学病院の給与規程(公開分)
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